衛星使い高速双方向通信 2000年09月26日 日経産業新聞 
Q VSATという言葉を良く見かけます。どういう意味ですか。
A VSATの直訳は超小型衛星通信地球局。通信衛星(CS)を活用し、地上の多地点間を結ぶ小型衛星通信システムです。一般的なCSシステムに比べ通信設備を小型化でき、電力設備などを最小限に抑えられるのが特徴です。
 CSというと、衛星放送のように宇宙から地上の多地点へ一斉に情報配信する同報性や速報性に優れるというイメージがあります。しかし、VSATは放送には不向きかもしれませんが多地点を双方向の大容量デジタル通信で結べます。

Q 最近の技術的な注目ポイントはなんですか。
A ブロードバンドVSATと呼ばれる新技術が「最後の一マイル」問題を解決する新方式として注目されています。従来方式ではキロビット級の伝送速度でしたが、新方式はメガビット級の送受信が可能。しかも導入コストは従来に比べ大幅に下がります。従来は一拠点あたり最低でも五千万円程度の初期投資が必要でしたが、新技術では十分の一程度の五百万円程度まで下げられるようになってきました。

Q どうして劇的な技術革新が可能になったのですか。
A ネットベンチャーのテレマン・コミュニケーションズ(東京・台東)と衛星・無線技術を手掛ける米オムニ・スペクトラム社(カルフォルニア州)が共同開発した新技術が可能性を広げました。送信能力は上りの回線が従来技術の伝送速度の十倍に相当する毎秒一・五Mbit、下り回線は二倍の同Mbitまで出ます。電子回路に汎用ICではなく独自開発のASIC(特定用途向けIC)と制御用ソフトウエアを組み合わせるなど、送信能力を高めるためデータ信号から電波信号に効率良く変換する技術を実用化したのです。

Q 新技術を用いるとどんな用途が広がりますか。
A 従来の用途は販売時点情報管理システム(POS)や企業内データなど小容量が主でした。双方向のVSATの機能に大容量・広帯域化が加わることで、音声や動画像の送受信も可能になり、サービスの幅が大きく広がるでしょう。例えば音声を含む動画像や情報量の多いデジタル画像も高速で送受信できるようになります。テレビ会議、遠隔教育、遠隔医療などが代表例です。

Q 課題は全くないのですか。
A 伝送の遅延時間をどう解決するかという問題があります。例えば二地点間をデータが往復する間に映像や会話のタイミングがずれるという現象が起きます。これは相互に情報をやり取りする場合、必ずデータがCSと地上基地局を経由するためです。ちょうど一昔前の衛星を使った海外電話サービスのような現象が生じるのです。

Q 解決の手段はないですか。
A そのための取り組みが始まりました。大阪府立大学総合情報センターの田村武 志教授らとテレマン・コミュニケーションズはブロードバンドVSATを用いた遠隔教育実験を行います。東京・大阪間をCS回線で結び、情報技術(IT)関連の授業やネット技術実習の模様を相互に送り合うのです。映像や音声の品質、情報伝達の遅延時間など技術的な課題を検証するのが狙いです。外資系の衛星事業者に比べ国内系の衛星事業者の料金水準は高いと指摘する声が多く、CSネットサービスの普及の上での障害になるでしょう。     

(K)

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